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いや、しんどい

厳密には軍団ではなく、夜世府を起源とする言葉。

2月総会の後に行われる飲みというものは我がサークルでは通常の総会の後に仲の良い人間同士で行われる飲みとは多少異なった意味を持っている(らしい)。よって、この飲みには多くのサークルメンバーの出席が望まれ、無論幹事長の出席は当然といえば当然である。

しかし2006年度はわけが違った。飲みの幹事が総会後、夜世府に対して今日の飲みに参加するかどうかを尋ねた。しかし尋ねるという行為をとったのは建て前上のことであり、彼としては夜世府は参加するものと考えていただろう。しかし、そんな彼の思いを夜世府の一言が一刀のもとに切り捨てた。
「いや、しんどい」

私は問いたい。読む者に未だ知らぬ知識を授けることが辞書の役割であろう。故にその編纂をしている人間が読者に対して問いを発するなどとは愚の骨頂であるかもしれない。それでも問いたい。
誰がこの一言に反論できるのかと。
「しんどい」という言葉はごくごく普通の言葉である。普通の「しんどい」に対してなら反論もできよう。しかし、夜世府の「しんどい」は違うのである。彼の心の深淵にあるとても重いもの、鬱屈した何かと言えばいいのか…?いや違う。「苦」を避け、ただただ「楽」を渇望する人の魂より発せられる根源的な叫び…。それに近いものを感じたのだ。それはひどく感覚的なことであり、こうして書かれた言葉になってしまったら何も伝わらないだろう。これはあの時、あの場所にいた者しかわからないのである。彼の声のトーン、表情、彼から発せられる空気…いや、彼の周りで蠢く何か、言葉にしがたい底の知れぬ何かを!

…だめだ、しんどくなってきた。

著 ゆかりん

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